2013年4月25日木曜日

笹本征男君のこと (9) 詩集 いずも から

ほぼ同じ年齢で、山村と下請け孫請けの工業地帯のスラムとの相違はあるが、私には「ハックルベリーフィン」の物語はそれ程心に残って居なかった。中学の頃は図書委員の「役職」を悪用して読みたいと思った書籍を図書室に購入してもらっていたのに・・・
彼の病室でその話をしたら、「君は冒険に憧れなかったのか?」と聞かれた様に思う。
アセチレンガス灯は共通の思い出だ あのガスの臭いを知るものはもう少ないだろう
カーバイトを水と接触させアセチレンガスを取り出すともしびは、炭鉱でも使われた
あのほの暗い明かりでも、彼の思い出の中では耀いていたひとこまなのだろう


ハクルベリーフインの夜

夜の川
ヘミングウエイのミシシッピー河にいる
舟の上で燃えるアセチレンガス灯
川面が輝く

父が投網を投げる
手繰られる投網の中に鮎の銀色の体がおどる
船首にいるハックルベリーフィンの私
竹竿を川底に押しつける

網から鮎をはずし生け簀に入れる
夜が明けて樽に鮎が詰められ
塩をまぶされ魚市場に送られる

夏の夜の中で若い父とハックルベリーフィンがいる

2002年11月3日 この日、彼は一日の内に四編の詩を歌った。
土曜美術社出版販売 詩集 いずも ISBN4-8120-1509-X