2013年4月13日土曜日

笹本征男さんのこと (7) 詩集 「いずも」から

笹本君は、決して文学者では無いし、私も同様に文学系の人間では無いので、彼の詩が文学的にどう評価を受けるのかは知らない。でも、この詩集が出版される前に、彼の病室からロビーに歩きながら、広告紙の裏側に書き綴った詩を私に読ませながら語りかける彼の目は本当に耀いて居た事は間違いない。
彼からこの詩の背景となった情景の話を聞いた事が有ったが(この葬儀の時は私はまだ笹本君と親しくなる前の事だった筈だ)、吾等の生きた時代はそんな時代だったのだと、それが良いとか悪いとかでは無くてそれが現実だったと言う事を否定出来ない時代だった。説明すべき事でも無いか!


母へのことば

行きたければ行けばいい!
母が叫ぶ

なぜ生母の生んだ兄に会いたいなどと言ったのか
東の出雲にいると言う血の繫がっただけの兄に・・・・・・・・・・
父の葬儀が裂かれる

生誕三十日から育ててくれた母に
何ということばか

四十年経っても
引きつった母の顔が浮かぶ
晩夏の故郷の空気が淀む


出典:土曜美術社出版販売 詩集 いずも
ISBN4-8120-1509-X

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