2009年10月10日土曜日

群馬県川原湯久森トンネル

政治の変換で建設中止の方向が話題になっている群馬県の八ツ場ダムが完成したら水没する筈だった枕状溶岩です。残念ながら取り付いてハンマーで叩いて見る事は出来ません。
この附近では岩脈が大変多く、川原湯岩脈群として知られています。昇竜・臥龍の岩脈近くに久森トンネルがあり、やや上流の臥龍岩脈の傍に駐車スペースがあります。
久森トンネルを構成しているのが枕状溶岩です。一応、歩道がありますが、残念ながら河床に下る道が在りません。又、これについて記載している文献も探し出せなくて残念ですが、枕状溶岩には間違いない様です。
昇竜・臥龍以外にも大変に大きな岩脈もありますが、岩脈があると言う事は少なくともその岩脈が貫入した時期にはその最高点以上に地表面は高かった訳で、現在の河床附近に存在する枕状溶岩がそれらの岩脈と同時期に誕生したとは思えません。
付加体として此処に定置したのか?(可能性は小さいと思っています)岩脈が貫入後数万年を経て附近が侵食後に何らかの事由で附近に湖水が溜り、其処に貫入したマグマが水中熔岩として噴出し枕状溶岩となったのか?興味深い露頭です。(鮮新世後期の貫入岩体である事が確認出来ました)
川原湯岩脈群は国指定天然記念物「臥龍岩」の解説板によれば、「約230万年前の輝石安山岩の熔岩」と書かれています。この下流の小野上にも枕状溶岩があります。小生のデータNo.014. 場所は
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.aspx?b=363255&l=1384146

今日は、箱根の博物館で日本火山学会の大会が開かれていました。勿論素人の私は火山学会の会員ではないのですが、「日本火山の会」と言うweb上の火山が好きな人々の会に参加していて、火山学会のご好意でポスターセッションに展示し、PRをさせて頂ける機会が在りましたので、その説明員を勤めさせて頂きヤット帰宅しました。楽しい事が沢山在りましたが、何れそんなお話もしてみたいと思いながら、何とか自分に課している「一日一回はこれを書く」事が何とか今日も守れたな!とほっとしています。

2009年10月9日金曜日

千葉県鴨川青年の家(10)

さて、鴨川青年の家の露頭もそろそろ一区切りにしましょう。
これは千葉県の指定天然記念物に指定されている部分です。
枕状溶岩や柱状節理が海岸線で露出している時は、この様に大変に平坦な面が波蝕により構成される事があります。平坦部は断面構造の観察に、崖の麓は外形や熔岩の流れを見るのに好適です。
青年の上の裏山は高さ100mは在りそうです。海底の何処までこれが続いているのか判りませんが、これだけの熔岩が堆積するにはどれだけの時間が掛かった事でしょうね?沖に見える島も枕状溶岩で出来ています。画面の向こうの漁港にも多くの露頭がありますので、いずれこのブログでもご紹介する予定です。
嶺岡を含むこの附近の地質については現在東北大学に居られる平野氏の解説が大変参考になりますのでご覧下さい。これは平野さんが東京工業大学時代に書かれたものです。他にも嶺岡から鴨川附近については多くの方々が紹介されています。参考になさって下さい。

2009年10月8日木曜日

番外編:小型柱状節理の断面形状

本日は番外編。冷却による柱状節理は全て六角形なのか?不定形のものは在るのか?これまでに見てきた小型の柱状節理の画像を探してみました。この画像は塩原温泉・布滝附近の材木岩と呼ばれる小型の柱状節理で断面形状は不定形です。場所は下記。
但し、ここの小型の柱状節理は本当に冷却速度のみの要因で小型化したのか?少々疑問があります。断面形状には一見板状節理の様な構造があり、それが砕けているように見える画像が多いのです。
「栃木の自然を訪ねて」の157頁には、「夕の原の駐車場から100mくらいのところに,材木を立てかけたような割れ方をする岩石が道路脇にみられます。・・・立派な六角柱状の節理が観察されます。」と記載されています。それはこの崖の上に在り同じ岩質「ひん岩」です。
道路脇の露頭の画像も有りますが残念ながら金網ごしのもので、しかも六角形には見えません。
「大地の鼓動・柱状節理の四季」と言う写真集を観てみました。この中に幾つか六角柱或いは五角柱では有り得ない表面形状を呈している物が有ります。例えば、30頁:宮城県白石市小原「小原の材木石」, 31頁:秋田県由利本庄市岩城滝俣「亀田不動の滝」,35頁:青森県下北郡大間町「津鼻崎」,39頁:島根県出雲市大社町「日御碕」。私の経験の中では、他に会津・湯ノ上温泉にある中山風穴と石柱の丘はやはり小型の柱状節理で出来た構造です。節理の断面形状が判り易い画像が手元に在りません。11月初めにに歩予定なのでその時に参考になるものを探して見ましょう。
参考までにweb上で入手し易い文献を二例ご紹介します。
「澱粉を用いた柱状節理形成の模擬実験」 論旨 寅丸敦志・松本健 2003年
ここでは、柱状節理の断面積は冷却速度の-0.9乗に比例して減少する事。臨界の冷却速度以下では柱状節理が形成されない事。五角形が卓越する場合と六角形が卓越する場合がある事などが述べられています。
「東尋坊安山岩質貫入岩体の産状と構造」 福井市自然史博物館研究報告 2005年
冷却節理と言えども六角形でなくても不思議は無いようです。

2009年10月7日水曜日

千葉県鴨川青年の家(9)

前の画像よりも少し大きな枕状溶岩の先端部分です。ハンマーは一般的な E3-22P 、柄の長さは33cm。
表面の構造がかなり異なり、アルマジロの皮革の様な雰囲気です。
表面の亀裂は冷却による放射状節理を反映したものですが、枕状溶岩の冷却節理は一般的な柱状節理の様に六角形にはならない様です。冷却速度に関係するのか?熔岩が全体的には流れながら速度が変動し膨張と収縮が繰り返すので冷却節理が単純に冷却条件だけでは構成されないのか?小型だからなのか?
塩原などの小型柱状節理の場合は必ずしも六角形にはなっていない様なので、いくつか画像例を探してみましょう。
先端部分が少し剥がれて居る事から冷却節理が放射状に内部に入っただけでなく、岩脈に見られる様に表面附近では表面に平行に板状冷却節理が入った事が判ります。
ハンマーの右側では少し膨らんだ形状となって居るので、一端停止した後で内部の圧力が増加し横にはみ出した様です。膨らんだ断面の冷却節理の部分から、3回程度膨張で広がってから停止した事が判ります。この熔岩が手前に流れて来て停止した時に、内部は未だ充分な流動性を保持して居た事が想像出来ます。恐らく放射状節理は中心部まで届いていないでしょう。
左側には半分くらいの直径の小さな断面が見えています。この断面と熔岩の右手で膨らんだ部分の断面形状を比較して見て下さい。違いが判るでしょうか?
熔岩の下の面は見えませんが、その下の熔岩との間に別の層が在る様です。下部が割れたのではなくこの下の面を境界として上の岩体が滑ったのかもしれません。残念ながらこの下の部分は写真を取り損なっています。 

2009年10月6日火曜日

千葉県鴨川青年の家(8)

枕状溶岩の小道が切れた辺りから海岸露頭の上に出る事が出来ます。その崖の中に在る岩体です。ハンマー横のひょっこり顔を出しているものの表面に注目して下さい。(クリックで拡大して下さい)小さな「しわ」の様な筋が見えます。他の熔岩の表面はゴツゴツしていて同じ様なものが有るのか?見分ける事が出来ません。これは極最近までこの上に熔岩が有ったので表面が風化から免れていたのでしょう。枕状溶岩の表面には流れ方向にほぼ直角なこの様なしわ状の構造や、流れの方向に平行なしわが見られる事があります。
しわの状態はこの様に細かなものから、段ボールの様な大きな凹凸が繋がったものまで様々な大きさと形状があります。この構造の成因についてはいろんな説が有りますが、論文を読む前に考えてみるのも面白いと思います。
「論文=ある研究者の意見表明=全て正しいとは限らない」のです。
枕状溶岩に関する論文はwebでpdfファイルのものが500以上無償で閲覧出来ます。誰がどんな論文を書かれているかを探し出すのは大変ですが、疑問を検索keyとして探してみて下さい。

2009年10月5日月曜日

千葉県鴨川青年の家(7)

比較的滑らかな表面を見せている枕状溶岩。比較的柔らかな状態でスムーズに流れたものと考えられます。傾斜が充分だったのか?熔岩の供給量が充分だったのか?旨くバランスが取れていたのでしょう。
表面の形状は様々で、熔岩の流動に伴って破断された表面の殻の部分が礫岩の様に現れたものや、流れ方向に直角に縞模様が出来たもの、この様に細かい冷却節理はあるものの、滑らかに見えるもの等が有り、その流動状態と成因を考えると興味が尽きません。
ハンマーの柄の上にはその断面が現れています。ハンマーの鋭い側の先には「こぶ」状のふくらみが見えますが分岐した様子は有りません。ハンマーの右手の枕はその下の熔岩にめり込んで居る様に見えます。その間には薄い層があり、急冷時のガラス層と思われます。
尚、青年の家の建物周りには熔岩が使われていて、断面や表面が見えています。画像は省略しますがこの観察も面白いですよ。
この後は海岸の露頭に戻ります。

2009年10月4日日曜日

千葉県鴨川青年の家(6)

枕状溶岩の小道(勝手なネーミングです。念の為)の海岸側、カーブミラー附近の典型的な断面をしめす枕状溶岩です。スケールを忘れていますが、高さは大体100cm程度です。この附近が濡れていることが多いので直ぐに気付くでしょう。道路の反対側の枕の表面を観れば判りますが、この附近の岩体はかなり急傾斜で下に流れ下った様に見えますので、このような判り易い断面が出る事は余りありませんが、他の部分も枕の輪郭の観方を練習するには良い露頭だと考えます。常に判り易い断面や外側の表面が観察者の前に現れる訳ではありません。