2009年10月17日土曜日

埼玉県皆野町浦山の間違い!蛇紋岩露頭(2)

同じ一連の露頭だが岩相は場所によって随分変わるもので、この画像で入手した露頭情報と同一場所だと判断出来ました。
確かに、枕状溶岩にも似たような形状と言えない訳では無いが、何処を見ても放射状節理も急冷のガラス層も無く、妙にすべすべしていて変成岩にしても熔岩系ではないと思われました。
露頭の位置は既に述べた通りですが、長瀞と三波石峡に挟まれた「風早峠のやや東」に位置し、変成岩の多い場所ですが、地層は入り組んでいて、周辺に分布する採石場は砂岩を採掘しています。
この日はハンマーを振るう事の出来ない長瀞を通過して、地質学上有名な三波川変成岩と御荷鉾を廻る予定で、ここは第一ポイント!なのに空振り? 変成岩としても原岩によって変成岩の顔付きも変わる筈で、予習していた三波川の変成岩類とは異なる事は判りました。
手分けして様々な岩相のサンプルを取り出し道路に並べて品評会を行い、蛇紋岩に間違いないと結論しました。嶺岡の蛇紋岩を見ていてすこし岩相が此処とは異なり判断に迷う一面もありました。地質は経験工学なのだなと改めて認識した次第。
皆野町の荒川沿いの金ヶ崎附近にも似たような蛇紋岩の産出が知られています。例えば、「原色新鉱物岩石検索図鑑」146頁を参照下さい。後の2枚でその表面の特徴をご紹介します。

2009年10月16日金曜日

埼玉県皆野町浦山の間違い!蛇紋岩露頭

枕状溶岩に興味を持ち始めた頃は何を見ても「こんな所にも枕状溶岩がある!」と思ってしまう事がまま有って、自分の判断力が実に揺らぐ時期が有りました。「枕状溶岩が圧砕されている露頭」と紹介する情報が有りましたので、火山・地質の同好の皆さんと三波川と御荷鉾の変成岩を観に行く途中に立ち寄って見ました。行ってみると実際は枕状溶岩では無く「蛇紋岩」が圧砕(?)されている露頭でした。
一人では藪深い狭い道を車で走っていると不安が先立つけれど、多人数で行くと誰かがその道を走った経験者が居てほっとする事があり、地図では間違い無いがそれらしい露頭が無い場合は、皆で手分けして探す事が出来るので、数人で行くとかなり時間の短縮をする事が出来るケースが多く助かります。専門家の居ない状態ですがそんな観察会を時々開いています。
地図で指定された附近にはボコボコに風化した泥岩らしきものもあり、みんなでかなり迷った挙句にここに辿り着きました。岩質については多少意見が分かれたが最終的に蛇紋岩に落ち着いたので、これを含めて4枚の画像をご紹介します。岩石の名称は誰かが口に出してみる事が最終的に正しい方向に向き易いようですね.夫々の経験がその名称に対して抱くイメージと知識を基に、異論・賛同を唱える過程で夫々の理由がはっきりするし、様々な岩相の破片を探し出して来るので議論し易い環境になって来るようです。自由に遠慮なく意見を言い合える仲間は嬉しい!事です。少し違うかな?と思いつつ議論を重ねてひとつの結論を探し出せるのは良いですね。
データNo.145 位置は
今回の露頭は、残念ながら蛇紋岩でしたが、この岩石も不思議なもので、興味が尽きません。この他にも露頭でチャートの大きな岩塊に出会って、一瞬、「枕?」とはっとする事もありました。こんな例も参考になるかと思いますので、ご紹介したいと考えています。

2009年10月15日木曜日

群馬県川原湯久森トンネル(4)

これは最初の写真にもちらりと入っているトンネルよりも下流の岩体。表面の形状や色から見て、同一の岩体と思われるものです。
道路と河床の高さの差は大きくとても降りる事は出来ない。鮎漁などの盛んな場所では河川敷に下りる場所がかなり在るのだけれど、ここではそれが見付からずに断念。
ダム関連の公開された地質図では岩体の分布が判らないけれど、もう一度 県或いは外郭団体から出版されている地質図を調べてみようと考えています。ここは草津への抜け道なので、水没しなければ再度観察の機会はありそうだと期待している場所です。

2009年10月14日水曜日

群馬県川原湯小森トンネル(3)

これは久森トンネルの下流側。トンネル入口に見える部分。
眼をこらすと幾つかこの様な形状を見て取れます。枕と枕の間に隙間がないので、少し判り難いかもしれませんが、このタイプも比較的多いので慣れる事が肝要です。日照・影にもよりある方向から見るとハッキリする事もあるので、道路に注意しながら、いろんな方向から見ていると判ってきます。
時には、念の為に写真を写しておいて、モニターで90度回転すると枕状溶岩が浮かび上がって来る事もあります。

野村哲氏の編著「群馬の自然をたずねて」の106頁にはこの様に書かれています。「昇竜の東50mに久森トンネルがあります。ここの岩は水の中で作られたまくら状熔岩とまくら状熔岩が角礫化した岩石などで出来ており,地質学的には群馬県内でも大変珍しく岩脈以上に貴重なものです」

2009年10月13日火曜日

群馬県川原湯久森トンネル附近の岩脈(2)

岩脈をもう一つご紹介したい。昇竜岩脈は保護の為か?落石防止の為か?上に繋がる部分には網を掛けられていて岩脈の柱状節理を示す画像が得難いが、他にも附近には沢山の大型岩脈が存在している。
これは昇竜・臥龍よりも更に上流に有るもので、当時道路の付け替え工事が行われていた場所よりも高い位置まで延びていたから、ダムがどちらに転んでも今後も観察出来る(ダムが出来ると観察しやすくなる)岩脈。多分この岩脈を道路トンネルが貫通している。
臥龍岩脈は昇竜岩脈よりも古い時代のものらしいが、臥竜の右岸と左岸で岩相が余りにも違うので左右で別物と言う事は無いのだろうか?と疑問を覚えるのですが、これはその右岸と似ている様に思えます。
臥龍岩脈は貫入時のダイナミックな大地の動きを感じられるような大きなうねりが美しい。これが我々の視界から、観察対象から失われるのは惜しい!
これまでの長いダム反対運動の経緯と移転された住民の方々の心を考えると、最後まで建設を継続するようにと言う考えも異を唱え難い気がしてしまう。
川原湯から草津方面に向かうと山腹の柱状節理が素晴らしい「丸岩:1124m」も遠望する事が出来る。途中須賀尾峠に分岐すれば登山道はあるらしい。臥龍・昇竜の露頭が在る吾妻川の河床はおよそ標高520m附近なので標高差600mはある。
尚、八ッ場ダム工事事務所HP⇒ダム湖周辺の地すべり対策について⇒図1及び表1(別窓)にこの附近の地質層序と地質図が置かれているが地質図は小さ過ぎて読み難い。どうせならもう少し詳しい(データ量の大きな)地質図を公開して頂きたいもの。

2009年10月12日月曜日

群馬県川原湯久森トンネル附近の岩脈

これは久森トンネルの近くに有る昇竜岩脈の右岸の岩相です。同じ岩脈も不思議に右岸と左岸で全く雰囲気が異なります。岩脈の幅はおよぞ5m。と言っても測定した訳では在りません。3mと5mの二つの記述があるので、5mが近いだろうという程度の数字です。久森トンネルには解説板はありませんが、この岩脈には有ります。
ここの岩脈を取上げたのは、どちらも元はマグマの貫入によるもので、偶々地表に出てそれが水中或いは未固結の湿潤な地層だった場合には枕状溶岩になり、地表まで到達しなかったものは岩脈として周囲が侵食除去されてから岩脈として姿を現しているだけの違いだからです。
ここ川原湯では同じ河床レベルに岩脈と枕状溶岩があるので、明らかに噴出年代が異なる事が判断できます。
貫入岩から枕状溶岩が構成された例としては、青森県の黒石図幅地域の1/5万地質図,36-38頁には「Ⅳ.5 中新世貫入岩類」項,「Ⅳ.5.2. 浅瀬石川玄武岩」として第26図に厚さ6mの岩脈写真が、第27図に「貫入性枕状溶岩」の例が写真と模式図と共に紹介されています。ここは未だ観察に行く機会が無いのですが、この附近では玄武岩岩床中に「級化成層:第28図」も観られる様で興味深い地域です。

2009年10月11日日曜日

群馬県川原湯久森トンネル(2)

久森トンネルの外側に見える枕状溶岩の構造です。歩道から身を乗り出しての撮影です。トンネルとしてこの熔岩を通過するよりも、開削にした方が道路を作り易い様なトンネルですが、工事の企画者がこの熔岩の重要性を気付いておられたのか?トンネルの川に面した側面の厚みホンの少ししかありません。川が少し濁っていましたので、川面より下の岩石の様子を伺うことは出来ませんでしたが、転石にもそれらしいものが、又、下流側にも同色の岩体が在りましたので、これも同様に枕状溶岩だと思われます。
数少ないこの地方の地質文献の中で、群馬県知事を被告とする八ッ場ダムに対する「公金支出差止等請求住民訴訟事件」の原告最終準備書面(4)(ダムサイトの危険性)(2009年1月23日)に第2章ダムサイトの基礎岩盤の概要 第1 ダムサイト周辺の地層の概要 4.周辺地域での火山活動の影響の項にこのような記載がある。
「八ッ場ダムのダムサイト周辺地域は、第三紀中新世ころから火山活動の影響を受け続けてきている。八ッ場ダムのダムサイトから約16km東南には榛名山、約24km西南には浅間山、約20km西北には草津白根山がある。それらは何れも活火山であり、現在も活動を続けている。
第三紀中新世以降、特にダムサイトよりも上流側で、久森岩体、尾坂岩体等の貫入が見られた。第四紀更新世(第四紀とは、第三紀鮮新世に続く地質時代であり、約180万年前~1万年前を更新世、それ以降現在までを完新世という)に至っても、不動沢岩体、白岩沢岩体等の貫入が見られた(甲D5の1・19p)。 特に久森岩体、不動沢岩体、白岩沢岩体、等はkm単位の大きさの巨大な岩体であり、貫入した地層に亀裂や断層をいくつも発生させることになる。」
この「久森岩体」がこの枕状溶岩かもしれないと考えています。